楽曲解説

第1部

デュカス交響詩「魔法使いの弟子」

ドイツが誇る文豪ゲーテが1797年に書いたバラード(物語詩)をもとに、フランス人作曲家ポール・アブラアム・デュカスが1897年に発表した交響詩。
まずは簡単にあらすじをご紹介しましょう。

魔法使いが留守のあいだ、掃除を任された弟子。
はじめは掃除に励む弟子でしたが、覚えたての魔法で箒に命を与え、自分の代わりに水汲みをさせようと思いつきます。
どんどん水を運ぶ箒、でも魔法の解き方を知らない弟子は、箒を止めることができません。
次第に部屋は水浸しになり、弟子が溺れかけたその時、魔法使いが戻り、魔法を解くのでした。

金管楽器のファンファーレとともに現れる威厳たっぷりの魔法使い、黙々と水を運ぶ箒の、どこかコミカルな旋律はファゴットが担当。オーケストラ全体で、溢れ出る水と轟く雷鳴、そして慌てふためく弟子の様子が、生き生きとユーモラスに描きだされます。
1940年公開のディズニー・アニメーション作品『ファンタジア』の弟子役のミッキーマウスはあまりにも有名。

ガーシュイン「ラプソディ・イン・ブルー」

「ラプソディ・イン・ブルー」はジョージ・ガーシュインが1924年に発表した楽曲。 
ほぼ独学で音楽を学んだガーシュインは、クラシックとジャズをこよなく愛し、自身の経験やニューヨークでの生活の中で得たあらゆる音の要素を生かし、「アメリカの音」を生み出しました。
冒頭のクラリネットによる印象的なグリッサンドから、独奏ピアノの音色が光るラグタイムやブルースといったさまざまなアメリカ音楽と、ヨーロッパのロマン派のラプソディ(自由な形式や情緒的な表現力をもつ楽曲のこと)を掛け合わせた「アメリカの音」は、一気に私たちを熱気あふれる1920年代のニューヨークへと連れて行ってくれます。

ジャズとクラシックのかけ橋であるこの曲を奏でるのは、早くからその才能を開花させ、日本と世界をつなぐ活躍を続けるピアニスト奥田弦。オーケストラ・ジャパンとの一夜限りの共演をお楽しみください。

第2部

『ノートルダムの鐘』

15世紀末のパリ。冷酷な判事フロローに引き取られ、その醜い容姿ゆえ、ノートルダム大聖堂の鐘楼から外へ出ることを禁じられた、心優しい男カジモド。年に一度の祭りの日、仲良しのガーゴイルたちに励まされ、カジモドは生まれてはじめて外の世界に足を踏み入れます。そこでジプシーの娘エスメラルダと出会い、初めて友情に触れ、そして人を愛することを知るのでした…

文豪ヴィクトル・ユーゴー原作の小説「ノートルダム・ド・パリ」に着想を得た、1996年公開のディズニー・アニメーション映画『ノートルダムの鐘』。人々の心の闇と光が表現された本作は、個性あふれるキャラクター、アカデミー賞®ノミネートの胸を打つ音楽と息をのむ美しい映像で、公開からまもなく30年となる今も、多くの方に愛されています。

 

また、『ノートルダムの鐘』は、19世紀ロマン派の音楽がモチーフとされ、加えて教会音楽の要素も用いられていることから、ヴェルディ「レクイエム」やオルフ「カルミナ・ブラーナ」などを彷彿とさせる、他のディズニー音楽とは一線を画すクラシック要素の高い作品として、「ディズニー・オン・クラシック ~ 春の音楽祭2017」での日本初演以来、オーケストラ・ジャパンが大切にしてきた作品のひとつ。
荘厳な音楽が際立つ異色の名作の楽曲を手がけたのは、『リトル・マーメイド』『美女と野獣』『アラジン』『塔の上のラプンツェル』など、数々の名曲を手がけるレジェンド、アラン・メンケン。作詞には『ピピン』『ウィキッド』といった人気ミュージカルから、アカデミー賞2部門受賞の『ポカホンタス』でメンケンとタッグを組んだスティーヴン・シュワルツ。

The Bells of Notre Dame
/ノートルダムの鐘

カジモドの出生が明らかとなるオープニング。当初、長い語りによる進行が検討されましたが、作詞を手がけたシュワルツが「歌によって伝える」方法を提案し、ミュージカル形式の特別なオープニングとなりました。
まるでクライマックスのような迫力満点のオーケストラ・サウンドとコーラス、そして私たちに問いかけるように繰り返し鳴り響く鐘の音は圧倒的です。

Out There
/僕の願い

大聖堂の外への憧れをカジモドが歌い上げるナンバー。閉塞的な冒頭のアレンジから、やがて木管楽器、金管楽器も加わり、彼の自由と希望を渇望する切実さが壮大に表現されています。
メンケンが”自作品の中でも最も愛する曲”のひとつで、当時自宅に届いたばかりのYAMAHAディスクラビアに触れるうちに自然と生まれた旋律なのだそう。偶然聞いたシュワルツが「本作にぴったりだ」と詞をつけた、まさに“音楽に導かれた作品”。

God Help
/ゴッド・ヘルプ

フロローから逃れ、大聖堂に身を隠したエスメラルダが捧げる、祈りのバラード。
すべての弱き者への慈悲を願う、彼女の優しさと誠実さがうかがえる名曲です。
エスメラルダの歌声がオーケストラ、コーラスと溶け合い、大聖堂全体を包み込むような美しい余韻が印象的。

Heaven’s Light/Hellfire
/天使が僕に/罪の炎

「天使が僕に」では、美しく優しいエスメラルダに心奪われるカジモドの初々しい恋心が、一方、「罪の炎」はエスメラルダへの愛憎が混じり合い、相手を「裁く」ことで自身を保とうとする、フロローの破滅的な執着心があらわとなります。
歌、オーケストラ、コーラスが一体となり、フロローの狂気と歪んだ愛をそのまま具現化したかのような、迫力の一曲。